アアルトが設計した住宅の最高傑作「マイレア邸」

アアルトミュージアムに展示されているマイレア邸の模型

アルヴァ・アアルトの設計した住宅の最高傑作と言われるマイレア邸。
その魅力はアアルトが持つデザインの可能性を全て注ぎ込んだものでありながら、とてもシンプルで暖かみのある空間にあると思います。

私はこの素晴らしい住宅を実際に見学してきましたが、そのマイレア邸はどのような住宅なのか、紹介したいと思います。

アアルトと建築主のマイレ・グリクセン~共にARTEKをつくる

マイレ・グリクセンは、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルト夫妻と共にartek(アルテック)を創設した美術収集家。

北欧を代表し、日本でも大変人気のあるインテリアブランドartekは家具を販売するだけでなく、その活動を通してモダニズム文化を促進させることを目指していました。

流行にとらわれない普遍的なデザインであり近代的な家具であるけれども、伝統的な工法も取り入れどこか愛着を感じるartekの家具。
マイレア邸は伝統と新しい時代へのチャレンジを融合させた住宅で、artekの家具の原点であるように感じます。

アアルトミュージアムに展示されているartekの曲木の椅子

アアルトが愛を込めてデザインした、グリクセン夫妻のための家

ノールマルックはアールストロム社が製鉄所を所有し、現在もその一族が街の広大な土地を所有しています。

アールストロム一族であるグリクセン夫妻は先進的で、古い慣習に縛られず、モダニズムの表現方法に以前から興味を持っていたことから、友人であるアアルトに自宅で自由な家の設計を任せたそうです。
費用的にも、そしてそれまでになかったものへチャレンジをすることにも、全面に応援してくれるほどに。

この傑作はグリクセン夫妻の大きな支援があって生まれたものであり、それに対してアアルトが愛をこめてデザインしたからこそ生まれたものなのでしょう。
いろんな要素を取り込みながらも複雑さがない。極めてシンプルで、心地よい、やさしい空間なのです。

アートコレクターだったマイレの収集した作品も窓際に

伝統的なものを大切にし、普遍的なデザインを求めるアアルトの設計

西洋の近代建築は組積造、重力からの解放が大きなテーマであり、マイレア邸も水平方向に連続する窓や、細い柱、広い一体化した空間が見られます。

日本人からすると細い柱も横に連続する窓もそれほど珍しいものではありません。
だからこそ、アアルトは日本建築の線の細さや連続性に影響を受けたそうです。

そんな近代建築の要素を取り入れたマイレア邸ですが、伝統的なものを拒絶することなく、新しいチャレンジをたくさん取り入れています。
有機的であると言われるのは、屋外(森)と連続するような空間構成。
そして、ディテールで使われる曲線、曲面。自然や植物がつくるラインを、素直に取り入れています。

伝統的なサウナや暖炉を取り入れ、自分のデザインに融合させているところも素晴らしいですね。

丸い小窓や木の枝のようなデザインのドアハンドル。扉も細いラインの木板張りで。

マイレア邸の連続した空間の切り替え

私がマイレア邸に魅了されたのは、玄関を入ってから連続している空間の見せ方でした。

おそらくこの空間の見せ方には、わたしが設計する住宅デザインもだいぶ影響を受けていると思います。

玄関に入ってから、1階のリビング・書斎・ダイニングが連続した空間なのですが、その切り替えを「素材」「有機的なラインの壁」「段差」で感じさせています。

書斎に関しては、上部をOPENとした壁で間仕切りしていますが、そのつながりが美しく、そしてどこも心地よい空間なのです。

外部空間とも連続したように感じられます。
細い木が不規則に天井に伸びているように並び、構造の柱でさえもその一部のように見え、まるで室内も森のように感じる空間なのです。

愛読書「a+u臨時増刊アルヴァアアルトの住宅」より、マイレア邸のリビング階段

アアルトの設計に見られたのは「日本の空間の美しさ」だった

マイレア邸でも、他の建物でもガイドさんにアアルトは日本の建築に影響を受けた、と言われました。
そこには、日本の空間の美しさがありました。

竹の建具や、籐の家具を設けた「ウインターガーデン」、木を細く見せるデザイン。
伝統的なフィンランドの木造住宅では、木を細く使って見せることはないそうです。

私たちにはなじみのある引き戸。これも空間を連続させるためにとても大事な要素なのでしょう。

重力から解放され、自然と融合した日本のデザイン。
これがいかに美しいかということを、フィンランドで感じるのがこのマイレア邸です。

日本のインテリアにartekの家具をはじめとしたモダンな北欧家具が合う理由はそこにあるのかもしれません。

だからこそ、フィンランドに旅行したら、このマイレア邸に訪れてほしいなと思うのです。